高崎国際特許事務所
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<DABUS(ダバス)事件>

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<DABUS(ダバス)事件>
(令和6年(行コ)第10006号 出願却下処分取消請求控訴事件)

[争点]
発明は自然人によってなされたものに限られるか(争点(1))。
[判決の要旨]
AIは発明者になれない。AI発明については特許を付与できない。
[事案の概要]
1)原告は、欧州特許出願に基づきパリ優先権を主張して PCT 出願を行った。  
2)日本国への移行時、国内書面の発明者欄に「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載した。  
3)特許庁長官は、発明者欄に 自然人の氏名を記載するよう補正命令を出したが、原告が応じなかったため、出願却下処分がなされた。
4)原告は、これを不服として審査請求を行ったが、特許庁により棄却されたため、東京地裁に取消訴訟を提起した。
5)東京地裁により原告の主張が却下されたため、原告は控訴を提起した。
6)知財高裁は一審(東京地裁)の判断を支持し、「特許法上の発明者は自然人に限られる」と判断した。
その結果、特許庁の出願却下処分は適法であるとして、控訴は棄却された。
[判決の理由]
今回の判決で知財高裁が示した主な理由は次のとおり。
①「発明をした者」は、特許を受ける権利の主体となり得る者すなわち権利能力のある者である(特許法第29条第1項柱書)。
②「特許を受ける権利」は、自然人が発明者である場合にのみ発生する権利である(同法第35条第3項)。

さらに、知財高裁は、原告の主張に対して次のように判示している(下線は当所にて追記)。
i)  特許法上、権利能力のない存在を発明者とする発明について特許を付与するための手続は定められていないので、原告が主張するように特許法上の「発明」の概念自体は自然人を発明者とする場合に限られないと解したとしても、権利能力のない存在を発明者とする「発明」について、特許権を付与する余地はない。
ii) 現行特許法は、自然人が発明者である発明について特許を受ける権利を認めているので、AI発明が特許法上の「発明」の概念に含まれるか否かについて判断するまでもなく、AI発明について特許付与が可能である旨の原告の主張は理由がない。

≪弊所コメント≫ 
本判決においては、「自然人」および「権利能力」がキーワードになっています。
そこで、本事案については、主に「自然人の境界」及び「権利能力の付与の対象」の観点から、
BLOGページでさらに詳しく掘り下げたいと考えています。

(補足)
諸外国においても「AIは発明者に該当しない」と判断されています。

中国AI特許審査の転換点

29/3/2026

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本記事は、弊所と取引のある台湾の維新国際専利法律事務所 (Wisdom International Patent & Law Office) の許可を得て掲載しております。

中国特許庁は、2026年1月1日より新たな『専利審査指南』を施行した。本改訂では、人工知能、ビッグデータ等の新技術分野に関する審査規定について、体系的な補充及び調整が行われており、本改訂における重要な焦点かつ注目点とされる。これらの変更は、現行のAI特許出願における曖昧な領域やよくある課題を正面から対応するものであり、より明確な審査方針を提供するものである。以下では、主な規範内容及び代表的な事例について説明する。

1.専利法第5条第1項の導入:倫理性及び合法性が特許性の判断要素に
 (1)ショッピングモールにおけるマットレス精密マーケティングシステムの事例 — 個人情報保護コンプライアンスは特許付与の前提条件
  本改訂では、専利法第5条第1項に基づき、人工知能関連発明において、データの収集、分析又は意思決定メカニズムが法律、社会公徳又は公共の利益に違反する場合には、特許権を付与することができない旨が明確に規定された。
  追加された事例の中で、「ビッグデータに基づくショッピングモールにおけるマットレス販売支援システム」が典型的な事例として挙げられる。当該発明は、ショッピングモール内に設置された撮影装置及び顔認識モジュールを介して、顧客が気付かない状態で顔の映像を収集し、身元識別及び嗜好分析を行い、精密なマーケティングの目的を実現するものである。
  審査指南によれば、中国個人情報保護法の規定上、公共の場における顔認識設備の設置は、原則として公共の安全の維持に必要な場合に限られているところ、本件は商業マーケティング目的に属し、かつ、出願書類において顧客の個別同意の取得又はその他の合法的根拠が開示されていないため、違法な発明に該当し、特許付与の対象から直接排除されると判断された。
実務上の示唆
 本事例は、個人情報の取り扱いに関するAI発明に関して、コンプライアンスの問題が将来の実施段階における法的リスクにとどまらず、特許審査段階においても拒絶理由となり得ることを示している。したがって、関連出願の書類作成にあたっては、明細書にデータ取得の合法性に関する背景を適切に記載する必要性を慎重に検討することが望まれる。
 
(2)無人運転緊急意思決定モデルの事例3——価値判断そのものも特許性を否定し得る
  もう一つの追加事例は、無人運転車両における緊急意思決定モデルに関する発明が挙げられる。当該発明では、モデルの学習段階において、歩行者の性別及び年齢を意思決定パラメータとして導入し、事故が不可避な状況において、これらの要素に基づき車両の進行方向を判断する。
  審査指南では、この技術的手段は、実質的に性別及び年齢を生命価値の差異の基準としており、高度な議論を呼ぶ価値判断を技術的意思決定に組み込んでいるため、すべての人間が生命に対して平等な権利を有するという基本的な社会公徳に反し、専利法第5条第1項に規定される社会公徳に反する発明に該当すると示している。
実務上の示唆
 本事例は、人工知能特許に関する審査が、「意思決定ロジックそのもの」の価値判断にまで及んでいることを示している。自動化された意思決定、順位付け、リスク評価に係るAI発明においては、倫理的に高度な争議性を有する判断基準を技術的特徴として直接組み込むことは避けるべきである。

2.進歩性判断:応用分野の置換のみで特許性を裏付けるには不十分
  本改訂では、事例を通じて人工知能発明における進歩性判断基準がさらに明確化された。
  「船舶数識別方法」の事例4では、深層学習モデルが船舶画像の識別に適用されたが、引用文献には同一の処理プロセスによる果実の数量識別が既に開示されていた。審査指南では、識別対象が異なるのみで、モデル構造、学習方法又は特徴処理に実質的な調整が行われていない場合には、当業者が直接置換可能な応用に該当し、進歩性を有しないと示している。
  これに対し、「鋼スクラップ等級分類ニューラルネットワーク」の事例5では、鋼スクラップが無秩序に堆積され、特徴が不明瞭であるという課題について、畳み込み層及びプーリング層に対して具体的な調整が行われ、識別精度の向上に直結する技術的効果を有することが証明されたため、進歩性を有すると認定された。
実務上の示唆
 人工知能発明の進歩性のポイントは、「どの分野に適用したか」にあるのではなく、技術的課題に応じてアルゴリズム又はモデル自体に非自明な改良が施されているか否かにある。

3.明細書における記載要件基準の実質的な引き上げ
  人工知能モデルの「ブラックボックス化」という特性を踏まえ、本改訂では、明細書の記載要件についても明確に引き上げられた。
  「顔特徴を生成する方法」の事例6においては、空間変換ネットワークのモデルにおける具体的な配置について限定されていなかったものの、当該配置が本技術分野における通常の知識に属するものであるため、十分に開示されていると認定された。
  一方、「生物情報に基づくがんの予測」の事例7では、どの血液指標や顔特徴ががん判定と実質的な関連性があるについて説明がなく、また、検証データも提供されていなかったため、技術的効果が推測の域にとどまり、開示が不十分と判断された。

4.結論:中国AI特許審査の今後の方向性
  総合的に考えると、2026年に施行された新たな『専利審査指南』は、中国における人工知能特許審査が、「コンプライアンス重視」「実質重視」「開示重視」という高水準の段階に移行したことを示している。今後、出願人がAI関連発明の出願戦略を構築するにあたっては、技術革新自体に注目するだけでなく、その合法性、倫理リスク及び開示の完全性についても併せて検討することが求められる。これにより審査リスクを効果的に低減し、より安定性の高い特許権を取得することが可能となる。

​≪弊所コメント≫
中国の『専利審査指南』の改訂は、AIやビッグデータ関連発明の審査基準をより具体化・明確化するものです。これに対応する日本国特許庁の現行基準については、BLOGページで触れておきたいと思います。

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